ブラウス通販で過ごす

ブラウス通販で過ごす

「社員一人ひとりが持つ、商品に対する情熱、ブランドに対する情熱が違う」と言っています。 新入社員にはいつも「もし、そうした熱い気持ちが持ってないなら、この会社にいてもしょうがない」と話しています。
どんなに戦略が正しくても、最後はそれを実践する人の気持ちが大事になるからです。 取引を開始して間もなく、ある百貨店に年始のご挨拶に伺ったとき、社長さんからLについてうれしいコメントをいただきました。
「われわれが若いころ、先輩から言われたのは、百貨店の商いのコツは季節の変わり目にある。 すなわち、シーズンが変わるときこそ、お客様に新しい商品を買っていただく一番よいチャンスだと教え込まれてきたのです。
しかし、Sさん、僕はLというブランドを知って、いままでの考え方がすっかり変わってしまいましたよ。 なにしろ、Lは季節の変わり目に関係なく、年中売れるんですから」「365」というキーワードは、そこからきています。
リアル・ブランドは、季節を超え、流行や時代をも超え、365日いつでも売れる商品力を持たなければいけないのだと。 「9・9」というキーワードは、SのF社長(当時)をパリ郊外のアニエールの工場に案内したときにいただいたコメントからきています。
1世紀以上続くアニエールの工場で、いまでも職人の手で丁寧にトランクがつくられている様子を見たF社長は、そのときの感想を、数学者のM氏との対談本「らくらく対談』(明日香出版社)のなかで、「ものの価値というのは、100メートルを10秒で走っている人と、9秒9で走っている人は、0.1秒しか違わない。 だけど、その0.1秒で一位とか2位になるわけで、最後のわずかなところで非常に増大するのだ」ということを述べておられます。
このように、価値というものは最後の0.1秒で、われわれが想像する以上に大きく広がるものなのです。 もし「一秒でもいいよ」ということであれば、その価値を追い求めて、ぎりぎりまで努力することはないでしょう。
ブランドも同じです。 他にないユニークなものでなければ、一番のブランドでなければ、確かな価値を提供することができませんし、お客様から認めてもらったり、愛着を持ってもらったりすることもできません。

ですから、0.1秒にこだわる気持ちがあるかどうかというメンタリティーが、ブランドビジネスではたいへん重要になってくるのです。 別に0.1秒にこだわらなくてもいいじゃないかというのではなく、最後まで0.1秒を縮めることにこだわるメンタリティーが重要なのです。
世の中に完壁というものは存在しえないと思います。 完壁な人間などいないし、完璧な商品もありえないのです。
しかし、完壁なものへ近づく努力をすること、これはとても大事なことです。 100メートル走者が最後のコンマ一秒にこだわって必死の努力をするように、ブランドも完壁な商品とサービスを目指して、最後のコンマ一秒を縮めることに執念を持つこと。
こうした努力をしないということは、リアル・ブランドとなることを諦めることを意味するのです。 「9・9」というキーワードはそこからきています。
新入社員ばかりでなく、ジャーナリストからも必ずといっていいほどLは毎年毎年、売り上げを伸ばしているが、この先も同じように成長していくのでしょうか?」という質問を受けます。 私は、その質問にどう答えるかのヒントを、1992年刊行のF氏「R」から得ました。
F氏は、学術論文でソビエト連邦の崩壊を予言し、一躍有名になった日系三世のアメリカ入社会学者です。 実際にソ連が崩壊した後、この論文が本という形で出版されたのが「S」です。
「認知の欲望」の理論にのっとっています。 彼の予言は、哲学者Hの唱えた人間の認知の欲望とは、自分のことを他人に認知してもらう、すなわち、他とは違う一個人として認めてもらいたいという欲望です。
身近なことでいえば、他人とは違った自分の好きな家に住み、自分の好みの服を着て、自分の意見を自由に述べたいというような欲望のことです。 当時のソ連では、基本的な衣食住のサバイバル・レベルは充足されていましたが、その次に必然的に出てくる、人間の認知の欲求を満足させられる政治・社会・経済システムを持っていないので、早急にこのような体制は崩壊すると推論したわけです。

F氏は、また、Hが認知の欲望を説明する文章で、「人間は他人の持っているものを欲しがる。 まして、持っていないものにおいておや」と言っていると紹介しています。
人間の本質を突いた名言だと思います。 私はこの言葉に、Lが売れつづけてもおかしくない、という理論的な支えをもらった気がしました。
これは、入閣の本質に基づいた必然性であるからです。 私は、F氏の提起した独創的仮説に敬意を表するとともに、Hがとらえた人間の本質に基づいて、人間は上質なものを欲しがるということに自信を持つことができました。
乱暴な言い方かもしれませんが、このことから、求められるブランドでありつづけることができれば、売り上げは心配ないと思っています。 90年4月のLMの社内報に、Lの社是ともいうべき「コーポレート・チャーター」(L憲章)が掲載されました。
私は強い感慨を覚え、その後もずっと気にかけていたこの言葉を、この年のキーワードとしました。 ブランド業界というのは華やかで、成功すればするほど調子にのって高飛車になったりしがちですが、実は、この業界こそ、「誠実さ」と「節度」が必要とされる世界なのです。

バブル崩壊後、いち早く元の成長軌道に戻って、600億円という売り上げを達成した96年こそ、この言葉の意味を重く受け止めるべきと考えました。 97年には、売上高は700億円を突破し、店舗数は38、社員は438名になりました。
前年は、M・キャンパス誕生100周年を記念してS・シリーズも発表され、新商品で沸き立っていた年でした。 こういうときこそ、サービスに光をあてるべきだと考え、サービスの神話づくりに挑戦しようというスローガンを掲げ、全社をあげて、その具体的プログラムづくりに着手しました。
「サービス・コミッティー」と名づけられた顧客サービス推進プログラムに関しては、第5章をご覧ください。 この年はLジャパンが創立20周年を迎えた年でした。
前年、アーティスティック・ディレクターに就任したMのデザインによる最初のコレクションの発売が始まった年でもあります。 145年目にして初めてファッション商品が加わったことは、一大事件でもあり、まさに「革新へのチャレンジ」の年となったわけです。
複数のファッションブランドが共存するLMHグループの一員となったことで、徐々にファッション業界を身近に感じてはいましたが、いざ、Pと靴を日本初のグローバルストア(大阪心斎橋店)Lで売りはじめるということは、にとっても、まさに大いなるチャレンジだったわけです。 つまり、季節や時代に関係ない定番商品だけのビジネスに、シーズンごとにラインが入れ替わるファッションアイテムが加わることで、営業やPR活動、人材育成、在庫管理など、ありとあらゆる分野で、過去の成功とビジネスプロセスにとらわれない、新しい発想、メンタリティに基づくチャレンジが必要とされる事態に直面しているということです。


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